悪魔は夜に笑う
「ホテル代返すから待って」


あえて触れないようにしてたのに、蒼士郎くんから蒸し返してきた。
誰かに聞かれたらどうする。私は慌てて路地裏に隠れるように蒼士郎くんに近づいた。


「ええって、もらっとき」

「じゃあ今度奢る」

「オッケー、その方向性で行こう」

「なんか俺に対しての対応適当じゃない?」


ホテル代の件が解決したのに不満そう。
対応が適当?私がいつもあんたに思ってることだわ。


「あと、連絡先教えて」


すると蒼士郎くんはスラックスのポケットからスマホを取り出した。
連絡先を知りたいと言われたのは5年間で初めての出来事だった。

知ってどうするんだろう。もし曖昧な関係を続ける気ならますますお店に行きづらくなるからやめてほしい。


「やなこった」


考えた末、ふざけた態度で連絡先交換は見送ることにした。
渾身の変顔を披露しドン引きしてもらうことを狙う。
どうよこの女を捨てた変顔。白目剥いてまで変顔する女なんていくら蒼士郎くんでも興ざめするでしょ。


「変な顔」


するとシャッター音がしたから白目状態から脱した。
は?スマホで撮った?その行動は予想外だった。


「撮るのは反則でしょ!消してよ」

「やなこった。あゆなさんが勝手に始めたんでしょ」


ああもう、なんで私の真似して無邪気に笑うの。
心臓を鷲掴みにされたみたいに愛しい気持ちが込み上げる。

負けるな愛結那。この悪魔に心を許せば破滅の道を辿ることになる。
ともかくこれ以上関わるのは危険だ。
「絶対消してよ」と忠告を残して足早に立ち去った。
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