悪魔は夜に笑う
「なんで私ってこんなことばっかり……」

「俺が阻止したからセーフ」


怒りの後に覚えたのは悲しみ。
やっぱり私はまともな恋愛ができないんだ。
はあ、今日はいい気分で眠れると思ったのに。
感情をぐっとこらえて唇を噛むと、蒼士郎くんが立ち位置を変えて私の顔を覗き込む。


「また泣くの?」

「泣かない!こんなことでへこたれてる場合じゃない!」


自身に喝を入れるように宣言する。
そうだ、まだ未遂じゃないか。騙されかけただけで最悪の結末にはなってない。

ああでもモヤモヤする。ヤれそうな女だと思われたってことでしょ?
運命の出会いとか一瞬でも考えた私が恥ずかしい。


「今日仕事終わったらあゆなさんの家行っていい?」


悔しさをどうにか消化しようとしていると、今度は蒼士郎くんの魔の手が迫ってきた。


「なんで?」

「嫌なこと忘れたいでしょ。俺を利用していいよって言ってんの」


やけに真剣な顔で自分を利用しろって、何その誘い文句。
どうしてそこまでして私を求めるんだろう。


「私の家知らないでしょ?」

「知ってるよ。たまに店宛に花とか送ってくれるじゃん」


連絡先などの個人情報は教えない体でいたのに、住所を知っているなら防ぎようがない。
というか、送り状から住所知ってるなら電話番号も分かってたはずだよね。
その気なら電話番号からSNSのアカウント探したり、ショートメッセージ送れたはずなのに、あくまで私から連絡先を教えて欲しいんだ。

それって、慎重に私と仲良くなりたいってことじゃない?
いやワンナイトしちゃったから全て台無しなんだけどさ。


「終わったら行くから」


蒼士郎くんは引き締まった真面目な表情のまま釘を刺すように言い残し、裏口のドアから戻って行った。
< 25 / 181 >

この作品をシェア

pagetop