悪魔は夜に笑う
強い酒を煽ると頭がふわふわしていい気分だ。
あー、これこれ。酩酊感で思考能力低下するから嫌なこと忘れられそう。

その後もおつまみのナッツを片手に、3杯ほど強めのカクテルをお好みで作ってもらった。
完全にできあがって酔っぱらいと化した私は上機嫌でカウンターで締め作業をする蒼士郎くんに話しかけた。


「あーあ、蒼士郎くん今年で26歳かあ、ふふ、私と同じアラサーじゃん」

「あゆなさん、あっという間に30超えそうですね」


下を向いていた蒼士郎くんは視線をこちらに向け、片方の口角を上げて意地悪く笑う。


「やめて取り残されたくない!私の人生設計では30までに子ども2人いる予定だったの!」

「タイムリミットもうすぐそこですね」

「いい笑顔でなんてこと言うのこの悪魔め」


惚れ惚れする笑顔だけどマジで悪魔。
他人の不幸を目の当たりにして満面の笑みとかムカつく。
すると蒼士郎くんは笑顔のまま何か差し出してきた。


「はい、今日の伝票」

「閉店時間まであと1時間ありますが?」

「もうあゆなさん以外お客さんいないから閉めようかなって」


そういえば辺りを見渡せば客は私ひとり。
いやでもマスター不在なのにそんなことしていいの?


「勝手に閉めちゃダメでしょ!」

「売上目標達成してるからいいの。それにどうせあゆなさん、またすぐマスターに愚痴りに来るんでしょ?」

「ほんっと可愛くない!明日は全肯定紳士のマスターに愚痴聞いてもらうんだから!」

「明日っていうかもう今夜だけど」


あまりにも客の心に寄り添わないバーテンダーのせいで、憂さ晴らしに来たのに不完全燃焼だ。
残りの酒を一気に飲み干すと酩酊感が深まって眠気に誘われてしまった。
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