悪魔は夜に笑う
「あゆなさん、閉店ですけど。鍵閉めたいんだけど」


肩を揺さぶられ、自分が寝ていたと気づいた。
蒼士郎くんの顔がぼやけて見えて、近くにいるのに声がどこか遠くから聞こえる。


「じゃあもう、ここに泊まる……」

「持ち帰っていいんですか?」

「え、いや……蒼士郎くん巨乳好きでしょ?私ほら、貧乳だから勃たないって」


しかし持ち帰るなどと言われては眠気も吹き飛ぶ。
明らかに狼狽えて蒼士郎くんの顔を見るといたって真剣な顔をしていた。

なんで笑ってないの?逆に怖いって。
冗談にも程があるでしょ。絶対私のことタイプじゃないのは知ってる。


「試してみる?」

「冗談きついわ、はいはい分かりました迷惑客は帰ります」


なるほど、クズムーブで私を追い返そうという魂胆か。
閉店後も居座ろうとする客なんて迷惑極まりないだろう。

出禁を食らいたくないからさっさと立ち上がろう。
しかしカウンターチェアから地面に降り立った際、足首をひねって滑り込むように思いっきりコケた。
恥ずかしくて立ち上がれない。


「痛い……」

「なにしてんすか」

「ぐすっ、もうヤダ……」


上から降ってくる冷たい声。大丈夫ですかくらい言えよと思ったけど、怒りよりまず悲しみが溢れ出した。

我慢していた涙が頬を伝っていく。
私は肩を震わせてさめざめと泣いた。


「なんで泣いてるの?」


さすがに泣き出す私を放置するほど良心は腐っていないらしい。
蒼士郎くんはしゃがんでわたしと目線を合わせた。
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