悪魔は夜に笑う
「怒鳴られても呆れられても、俺は潔白だからあの人とはどういう関係かって聞いて欲しかった」


結果的に蒼士郎くんは私の予想を全て裏切った。
いつものように飄々と立ち振る舞うわけでもなく、苛立ちを見せるわけでもない。
まっすぐ私を見つめる瞳には哀愁を、言葉の節々には切実さを含んでいた。


「愛結那さんの中で、俺ってその程度の人間?」


掴みどころのない蒼士郎くんが落ち込んでいる。
きっとすぐになんてね、と気持ちを切替えるだろうと思ったけど一向に表情が変わらない。
へこむほど私のこと真剣なの?え、あの蒼士郎くんが?

目が泳いでることを知られたくなくて私は下を向いた。


「お願いだから私の心を占領しようとしないで」

「は?独占したいに決まってるでしょ。好きなんだから」


しかし開き直ったような態度に慌てて顔を上げた。
マスターが裏にいるのに会話聞かれたらどうすんの!


「ちょっ、声大きいって」

「いいよ別に聞かれても。マスターにはむしろ早く嫁もらえって言われてんの」


彼は本当に私のことが好きらしい。
当事者なのに実感がなさすぎて他人事だった。

泳がせておけばどうせ蒼士郎くんにも運命の人が現れることだろう。
今度こそと信じて裏切られ続けた人生だ。
はいよろしくお願いしますなんて単純に返事ができない。
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