悪魔は夜に笑う
「おつかれさま」


その時、すぐ近くからマスターの声がして顔を上げると、彼はもう着替えて荷物を抱えていて、にこやかに挨拶をしてきた。


「お、おつかれさまです!」

「愛結那さん、ゆっくりしていってください」

「ありがとうございます。おやすみなさい」


焦って声が上擦ったけど特に不審がられなかった。
蒼士郎くんは「お勤めご苦労様です」と声をかけて、ヤクザじゃないんだからとマスターに苦笑いされていた。


「後はよろしくね」

「はい、おつかれさまでした」


最後の挨拶は茶化さずきちんと頭を下げる。
目上の人を敬おうとする意識は彼の中にあるらしい。
私に対しての敬意はなさそうだけど。


「マルガリータです。どうぞ」


マスターの背中を注視していると、蒼士郎くんがテーブルにグラスを置く。
最後に一番夏っぽいカクテル出してきたな。
ライムがさっぱりして飲みやすい。


「ありがとう。ついでに精算済ませようかな」

「助かります」


ひと口飲んでスマホを取り出した。電子決済にしよう。どっちにしろ財布に現金入ってないし。
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