悪魔は夜に笑う
私の住んでるマンション前に着いたのは午前1時過ぎ。
閉店は2時だけど、ラストオーダーの時点で客が私しかいなかったからいつもより蒼士郎くんもだいぶ早く上がれたみたいだ。

玄関で靴を脱いでリビングに入る。蒼士郎くんはぴったりと後を着いてくるから、エアコンのリモコンを操作しながらなんとなく距離を取った。


「蒼士郎くん先にお風呂入る?」

「一緒に入ろう」


距離が近いと思ったらそういうことか。
仕事終わりなのによく性欲に割く気力があるな。


「ウチの風呂狭いからひとりで入って」

「俺の家よりは広いよ。ユニットバスじゃない時点で」

「よくそんな物件に5年も住んでるよね」


ひとまず話題をずらして荷物を整理する。
するとカバンのポケットから、さっき蒼士郎くんにもらったへんてこなキーホルダーが飛び出していた。


「こっちのキーホルダーがついてる鍵、本当に私がもらっていいの?」

「いいよ。最近新作もらった」


蒼士郎くんはリュックから何かを取り出し掲げる。
手の中には茶色くて丸っこいキーホルダーが。


「なにこれ、モグラ?」

「カモノハシだって」


なぜ中学1年生の女の子がカモノハシのキーホルダーを彫ろうと思ったのだろう。
マスターの娘、凛星(りせ)ちゃんは天真爛漫な美少女。
活発でお喋りでなぜか関西人っぽくて私と気が合う。
面白い子だから何かの思いつきで作りそうではあるけど、それをなぜ蒼士郎くんに渡したのだろう。
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