悪魔は夜に笑う
「今の電話、本当かどうか疑ってるなら来週の水曜店に来たら?」


私から問うより早く、蒼士郎くんは笑いかけてきた。
私が不安になってるの分かって言ってるな。
なんでちょっと嬉しそうなのムカつく。


「何?もしかして女から連絡きたと思って不安だった?」


黙っているとさらに接近して私の顔を覗き込む。
長いまつ毛がまばたきするたびに揺れる。
ううっ、ツラの良さを存分に生かして私を翻弄しようとしてる。
分かってるくせに質問するな。


「いいよ。誰から連絡来ても私たち付き合ってないから別に……」

「あゆなさんって分かりやす」


渦巻く感情とは裏腹に可愛くないことを口走る。
蒼士郎くんはお見通しみたいで、顔を上げたらもう彼は笑っていなかった。


「思ってもないこと言わないで」

「じゃあ思ってること言わせてもらいますけど不安にならないわけないやん。
いかにモッテモテなのか知ってるし。職場でも出会い山ほどあるやろうし。
それに今は追いかける恋が楽しいだけで、私のこと捕まえたら興味失うんやないかって、めーっちゃ不安!」


感情のぶつけ合いをしたいのか?
蒼士郎くんそういうの面倒くさがりそうだけど。
そこまで言うなら私も思ってることを口に出してみよう。
ただし、あくまで負の感情をぶつけないようにあえて関西弁で。


「俺、お客さんには手出さないよ。逆恨みされて店に迷惑かけたら嫌だし」

「私には手出してますけど?」

「あれは不可抗力」


矛盾を追及したら不可抗力とか言われた。
まるで私が誘惑したかのような言い方だ。
何を言っている、悪魔はそちらだ。
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