悪魔は夜に笑う
「蒼士郎くん写真撮らないの?」

「俺アカウント鍵かけてるから宣伝の意味ない」


だけど肝心のカレーライスの写真は撮ってない。
SNSで紹介するのに必要じゃないかなと思ったらそもそも宣伝しない気らしい。
プレオープンとは言えお金は払う方式らしいからいいけど。

たぶんめんどくさいんだろうな。アカウントはあるけど投稿0だったし。
今どき珍しく承認欲求が低いのかもしれない。


蒼士郎くんは「腹減ってるから美味しい」と言ってものの数分でカレーを平らげた。
昨日も帰ってすぐ寝たから余程腹ぺこなんだろう。
食べたと思ったら私が注文したたまごサンドを見つめている。


「私のたまごサンドを狙ってるな?」

「あゆなさんは優しいからひと切れくれるよね?」


私用に注文したナポリタンが多いからもともとたまごサンド食べてもらおうと思ってたけどひと切れと言わず全部あげようかな。
小首を傾げて上目遣いする仕草がわざとらしいけど愛らしくてたまらない。
これぞ末っ子の処世術。甘え方が匠の域だ。

皿ごと渡すと「ふたつともいいの?」って目を輝かせている。
ううっ、熱視線を向けるな。仕事中はあんな生意気なのになんで今日は無邪気なの。
どっちが蒼士郎くんの素の姿なんだ。


「ひと口は食べなよ」


ほら、私の知ってる蒼士郎くんは強奪するはずなのにお皿を戻してきた。
気遣いが嬉しくてもう胸がいっぱいだけどふわふわたまごサンドを頬張る。


「良いかぶりつき」


すると大口を開けた瞬間にスマホからシャッター音がした。
まさかカバみたいに口を開けた私の間抜け写真を激写した?


「あゆなさんってこんなに口開くんですね」


スマホを見つつ、私の反応を伺って意地悪な顔で笑っている。
前言撤回。やっぱりこの男は他人を陥れることが大好きな性根の曲がった悪魔だ。
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