悪魔は夜に笑う
「お願いしまーす」

「前にあゆなさん、なんでこんなボロアパートにずっと住んでるのって聞いてきたじゃん」


乗り込むと蒼士郎くんはエンジンをかけてすぐ冷房を付ける。
そしてナビを操作し、目的地を設定しながら話しかけてきた。


「なんでかって言うと、このアパート駐車場無料なんだよ」

「都内で駐車場無料!?」

「草刈りしてくれるなら自由に使っていいって。太っ腹だよ」


ボロアパートでも駐車場無料は魅力的すぎる。
外見がいくら昭和感あふれる木造建築でも入居者が耐えないことだろう。
でも土地がないと言われる東京で空き地って珍しい。


「ここ、いわく付きら で家建てられないらしいよ。ほらあそこに祠がある」


何故だろうと思ったらすぐ疑問が解消された。
祠ってなに?蒼士郎くんが指差した方向には確かに石造りの祠がひっそりと佇んでいた。
見た目からして相当な月日の流れを感じる。


「待って急に怖いって!」

「大丈夫、5年以上駐車場として借りてるけど俺は何もないから」


そう言うと蒼士郎くんは車を発信させた。

なんで急に祠の話持ち出してきたの?
私を怖がらせる目的としては十分だ。
なぜなら昨日、テレビで真夏のホラー特集を見てしまったから。
どうせ作り物でしょと分かってはいてもそれなりに怖かった。

その作り物ですらビビってる私を前に本物の怪談を語ろうとするな。
どうにか話題を逸らさないと。そうだ、男の人は車が好きだから車のことを褒めればいいだろう。
私は車内を見回し、そして笑顔を作って運転席の蒼士郎くんに話しかけることにした。
< 69 / 181 >

この作品をシェア

pagetop