悪魔は夜に笑う
「犯人はふたりだったんだけど、警察が駆け寄っても逃げ出そうとせず半泣きだったんだって」

「な、なんで」


前を向いたまま当時の状況を語る蒼士郎くん。
しかし赤信号で停まって、含みを持たせるように目配せしてから口を開いた。


「“祠から声がして怖くて立ち去ろうとしたら足を掴まれた”って」

「っ……スゥーー」


話の展開が気になって深入りしたら後悔した。
私は恐怖心を抑えるために大袈裟に息を吸ってなんとか堪えようとした。

待って、マジモンの怪異じゃん。
もちろん話を怖いけど、聞き入ってしまうその語りの技術も怖い。


「ひとりは足掴まれた拍子に捻挫して、もうひとりはそいつの叫び声にビビって腰を抜かしたんだって」


幽霊とか信じなさそうな蒼士郎くんが語る怪談だから信ぴょう性がある。
信じてないからこそ私を怖がらせるために嬉々として話してるのかもしれないけど。
どちらにしろ、風呂やトイレに怯える生活がしばらく続くことが確定した。


「どうしてくれるの蒼士郎くん……夜トイレ行けないんですけど」

「頑張って」


私がビビってる様子を見て、それは楽しそうに口を大きく開いて笑う蒼士郎くん。
味を占めたと思われただろうか。
怯える私を横に蒼士郎くんは鼻歌なんか口ずさんでご機嫌だった。
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