悪魔は夜に笑う
打ち寄せる波が足元に触れて遠ざかっていく。
だけど思っていた感触と違って、私は残念そうな顔をして振り返った。


「何その顔」

「……ぬるい」


冷たい海水を想像していたのに人肌並みの温度。
沖の方まで行けばきっと冷たいだろうけど今日は海水浴に来たわけじゃないからさっさと波打ち際から後退した。


「蒼士郎くんは海で何したかったの?」

「別に。あゆなさんと一緒に海を眺めたらどう思うかなって」


砂を落としてサンダルを履いていると、蒼士郎くんが私をじっと見ていることに気づいた。
なんとなく沈黙が嫌でふとした疑問を口に出した。


「なんだそりゃ。私と眺めてもロマンチックな雰囲気にはならないでしょうよ」

「うん、むしろ暑苦しいかな」


暑苦しい、ね。その言葉の真意はなんだろう。
表情が硬いのは暑さのせい?それとも私に言いたいことがあるの?
最近は表情も豊かになったし、少しは歩み寄れてる気がしたけどこういう時に不意に突き放される。

私の行動全てが試されているような気がしてこの場を離れたくなった。
最後にスマホで水平線を撮影して気持ちを整え、笑顔を作って蒼士郎くんと向き合った。
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