悪魔は夜に笑う
「戻ろう。夏らしいことはできたから私は満足」


まあ、考えすぎは体に毒だ。蒼士郎くんに関しては気楽に構えていよう。


「あゆなさんって、俺と写真撮りたがらないよね」


ところが蒼士郎くんが突拍子もないことをいうから作り上げた笑顔が崩れそうになった。
脈絡もなく疑問を口にしただけって分かってる。

きっと蒼士郎くんと関わってきた数多の女は、彼との接点を作るための手段として写真を撮っていたんだろう。
まあ、蒼士郎くんが写真を取らせる時点でだいぶ気を許してる女性に限るとは思うけど。

私があと5年若かったら蒼士郎くんに首ったけだったかも。
残念ながら保証のない未来を期待するほど幼稚じゃない。
虚しい思い出にしたくないから蒼士郎くんとの写真は撮らない。


「なんて?」


だから波の音で聞こえなかったふりをして駐車場に戻った。
蒼士郎くんは言い直さず、少し離れて私の背を追いかけてきた。

さて、蒼士郎くんはいつ冴えない私の本質に気づくだろう。
単純で魅力がないから散々フラれてきたんだ。分かってる。運命のせいにして自分を正当化したかっただけだって。

ジリジリと焼き付ける太陽の下、どうしても湿り気のある悩みが渦巻いて、心は晴れなかった。
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