悪魔は夜に笑う
車に戻ってエンジンをかけるとすぐに冷風が顔に当たった。
さすがエンジンが大きい車はエアコンの出力も違う。
涼しさにふうと一息つくと、蒼士郎くんはハンドルを掴んで車を出発させた。


「あゆなさんって夏が似合うよね」


海岸沿いを走っていると蒼士郎くんがぽつりと一言。
それはまたどういう意味?ここは私らしくふざけておくか。


「暑苦しいから?どうもおおきに」

「けど心地いいんだよ。あゆなさんの隣」


暑苦しさと心地良さは同時に成立するものなのだろうか。
感性が人と違うということは理解できた。
彫刻のような理想的で美しい造りの横顔を見つめながら、なんとなく彼の人となりが理解できたような気がした。


「今まで手放した人、もったいないなって思う」

「蒼士郎くんがお世辞なんて珍しい」


蒼士郎くんに褒められるのはむず痒い気分だ。
お世辞ということにしてしまおうとしたら目線がこっちに向いた。

に、睨まれた!怖っ、そんな顔しなくてもいいじゃん。


「あゆなさんって今まで付き合った彼氏と最長何年続いたの?」


すると蒼士郎くんから話題を変えた。
何言ってんの。私の恋愛話なんて耳にタコができるほど聞かされてるでしょ。
でも他人の恋愛って興味がない人は退屈に聞こえるよね。覚えてないのも当たり前か。


「……半年です。どの殿方とも一年未満で別れております」


ふん、男運のなさを笑えばいいさ。
関西の友達からは男ネタに尽きひんトラブルメーカーと呼ばれているこの私を。
< 78 / 181 >

この作品をシェア

pagetop