悪魔は夜に笑う
「一生懸命で健気な子だったんだけど、俺が好きになり切れなくて。それが相手に伝わったんだと思う」


恋愛において熱意の方向性が違うと不安になるよね。
蒼士郎くんなりに向き合おうとはしたはずだけど本気で人を好きになったことなさそう。

そう仮定するとなんで私のことが好きなのかって話になるけど、それはたぶん私が物珍しい女だから。
逃げる私を追いかけるのが楽しいだけだ。
蒼士郎くんは悪魔のような捕食者だから。


「まだその子のこと好き?」

「今はあゆなさんが好き」


悪魔に心を許すなと釘を刺した瞬間、カウンターで返ってきて予想外すぎて言葉が詰まった。
違うそんなことを言わせたかったんじゃない!

車内だと逃げ場がなくて私は目を泳がすばかり。
仕方ない一旦冷静に考えさせよう。


「追う恋ってさ、捕まえて満足しちゃうんじゃない?付き合って熱が冷めるみたいな」


前にも似たようなことを言った気がするが、蒼士郎くんは熱しやすく冷めやすい飽き性なんじゃないかと危惧しているからあえて発言した。

可愛くて魅力的な子が盛りだくさん寄ってくるのにあえてくたびれたアラサー女に言い寄るのは趣味が悪いんじゃないかと。
キャビアやフォアグラには飽きたからたまには珍味を食べてみようかな的な!
そうであってくれと願う日々だ。


「あゆなさんは冷めそうにないかな。行動パターンが読めないし」

「結構単純だと思うけど」

「でもまだ俺のこと警戒してるでしょ。俺はあゆなさんのこと解き明かしたいなと思ってる」

「解き明かす、とは?」

「恋人にはどんな甘え方をして、どういう気の抜けた表情をするんだろうって。それで、自然体のあゆなさんに甘えられたら俺はどう思うかなって」

「気の抜けた表情なら知っとるやろ。寝顔がそれやん」


甘ったるい空気を回避するため鋭くツッコミしたら彼は吹き出すように笑った。
今日一番の笑顔がこれかあ。なんだか複雑だけど嫌なこと忘れられそうな爽やかな笑顔が見れたからいいや。
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