悪魔は夜に笑う
振り返ると蒼士郎くんは自分でシャワーを浴びて髪を洗っている。
洗ってあげようかと思ったけど、自分はしてもらわなくてもいいらしい。

濡れた髪で色気が倍増した蒼士郎くんはなぜか近づいてきて私を壁際に追い詰めた。
相変わらず次の行動が読めない男だ。
今度は一体何?


「ねえ、なんで目を逸らすの?」

「ジロジロ見られるから恥ずかしいんです」


無駄毛はくまなく処理したはずだけど、明るいところですっぴんの見られることは想定していなかった。
アラサーになってシミらしき黒い影が出現して、毛穴も目立つようになってきた。
そういうのを見て幻滅されたくないなんて、意識してるのと同じだ。


「あゆなさんが大人しいといじめたくなる」


しかし当の本人は私の肌事情なんて関係ないらしく欲情して更に迫ってくる。
頬に手を伸ばされ、目線を合わせるように要求される。
見つめた蒼士郎くんはにっこり微笑んで、それから不意に男の顔を覗かせた。
そんな熱のこもった目で見ないでよ。私も感化されてしまう。

迫る魔の手に為す術なくついに距離はゼロに。私は唇を許してしまった。
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