悪魔は夜に笑う
「えっ、どういうこと」

「計算高い女でしょあれは」


呆れたような表情で断言した蒼士郎くんは目線を外し、自分の手元を見てカウンターの片付けを始めた。
話したいって自分から言ってくれたのに怒らせてしまっただろうか。

見る目ないのは自覚してる。だからこそ蒼士郎くんに心を許すのが怖いんだよ。
こんなこと、本人の前では絶対言わないけど。


「わざと注目を集めて素直でかわいい女を演じて、ああいうのが一番腹黒いんだよ」

「なんで蒼士郎くんは分かるの?」

「取り巻き作ってゴリ押しで連絡先交換してこようとする女のどこがいい子なんだよ」


蒼士郎くんの視点で話を聞くと納得した。
自分の立場で考えたら分かることだ。仕事中に連絡先聞いてくるなよって私でも思うわ。

さらに「謙虚の欠片もない自己中」と称して、伏せていた目をまっすぐ私に向けた。


「それに、俺はあゆなさんが好きって言ってるじゃん」


合わさった目の奥に感じたのは静かな怒り。
淡々とした口調でも不快感が拭いきれていない。
同時に蒼士郎くんがどうして怒っているかようやく分かった。


「よかったねって何?脈ナシだって突きつけられる俺の気持ち考えたことある?」


感情的にならないように冷静に努めている。
かすかに震える唇からその心境が読み取れた。
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