ビハインド・ザ・バック ~彼に狙われたら逃げられない~
「打つ順番も変えようぜ。ブレイクが門田さんだったから、次は百瀬さん、その次が俺、最後が鷹羽でどう?」
「いいよ。百瀬さん、どうぞ」

「ありがと」
 私はキューを構えながら、こんな姑息だったんだ、と丸野くんの評価をマイナスにつけた。

 だけど鷹羽くんの独壇場すぎてつまらなくなる気持ちもちょっとわかる。
 手球を撞くと、ちゃんと一番に当たった。一番はレールのクッションに当たって止まる。

「打ちにくいところだなあ。仕方ないバックハンドで行くか」
 丸野くんがキューを背面にまわしていた。

 だけど、どうにもときめかない。

 アンバランスな姿勢はただ不安定なだけ。隠されていたビール腹が強調されて、キューを持つ腕がぷるぷるしている。

 丸野くんがキューを撞くと、手球は的球に当たったあと、ほかの球の後ろに行く。これではカーブショットでも無理じゃないかな。

「ごめーん。鷹羽がうまいから、ついセーフティーを選んじゃったわ」
 どや顔で丸野くんが言うけど、たまたまだと思う。

「セーフティーってなに?」
「次の人が打つのが難しくなるように球を打つことだよ。守りの戦術」
 私の説明に門田さんが眉を寄せる。

「なんかずるくない?」
「ちゃんと公式で認められてるテクニックだよ」
 むっとする丸野くんに、

「じゃあ俺も遠慮なしで行かせてもらいます」
 鷹羽くんはにっこりと極上の笑みを浮かべる。
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