ビハインド・ザ・バック ~彼に狙われたら逃げられない~
 ああ、もう。全然集中できない!
 とにかく彼の教え通り、手球の下のほうを狙って打つ。

 手球はすーっと滑って的球に当たる。カチン、と音を立てた九番はポケットに走り、手球はブレーキしたように残った。

 入る!?
 一瞬喜んだものの、的球はポケットのゴムにはじかれ、ごろん、と戻ってきてしまった。

「惜しい!」
 門田さんが悔しげに声を上げる。

「これはいただきだな」
 丸野くんはにたにたと笑いながら台に近づき、あれこれと角度を悩み、時間をかけて狙いを定めて打つ。
 が、当たっただけでポケットに落ちることはなかった。

「狙いすぎたなあ」
 悔しそうな言い訳は、演技くさい。

 次は鷹羽くんの番だ。
 彼は背面にキューを回し、構える。

 急に周囲が深い静寂に包まれ、彼だけが鮮明に浮かび上がる。まるでスポットライトが当たっているかのようだ。

 そらした胸板も、袖から覗く腕も、キューに添えられた長い指も、なにもかもがセクシー。アンバランスな姿勢の中の均衡、くっと垂れるように首を傾けて狙いを定めるのもつやめいて見える。

 一瞬たりとも見逃すまいと凝視していると、彼が視線を投げ、ふっと笑った。

 きゅうぅん!
 私の心臓はもう瀕死。

 鷹羽くんは手球に目を戻すと、真顔で的球との距離を見定めて、ショット。
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