ビハインド・ザ・バック ~彼に狙われたら逃げられない~
 カチン、と音が響いた直後には九番はポケットに落ちていた。

 丸野くんは不満そうに鼻に皺を寄せた。
「お前、ずるくない?」

「なにが?」
 鷹羽くんはすっとぼけている。

 私と門田さんの白けたまなざしに気づいた丸野くんは、はっとして話を変える。

「百瀬さんにセクハラすんのもやめろ」
「指導してもらっただけだよ」
 私は思わずかばうのだけど。

「女にだけすんだろ。俺にはやらないくせに」
「男女関係なく、やるよ」

 彼はさっと歩いて丸野くんに密着し、腰に手を当てる。顏が近くて、まるでキスするみたいだ。

 反射的にのけぞる丸野くんの耳元に口を近づける。

「いい腰してるよね」
 そっとささやくと、丸野くんはびくう! と飛びのいた。

「お、おま、そういう趣味かよ」
「なにが? 仲良くしようよ」

 鷹羽くんはまっすぐに彼を見て、距離を詰める。

「用事を思い出したから帰る!」
 丸野くんは上着をつかみ、走って店を出て行った。

 私と門田さんは唖然とそれを見送る。

 鷹羽くんはくすっと笑ってから淡々とボールをセットし始めた。
 私は心配になって尋ねる。
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