ビハインド・ザ・バック ~彼に狙われたら逃げられない~
 なにこれ、かっこいい。

 私はついガン見した。
 背に回された右腕がグリップを握り、左手の節ばった長い指がブリッジを作り、キューを支えている。男性的な直線の体のラインが、服越しにこれでもかと強調されている。アンバランスな斜めな角度がたまらない。顔を傾けて手球を狙う角度は、神が計算して授けたかのようだ。

 彼に撞かれた手球は迷うことなく的球に衝突し、的球がポケットに落ちた。

 すごい。あんな打ちにくい姿勢から。

 ごとん、と音がして我に返る。
 見とれてる場合じゃなかった。

 私はこそっとみんなから離れ、声をかける。
「鷹羽くん。二次会、ここなの。見つかるとまずくない?」

 彼は驚いたのち、受付の課長たちを見る。
「ありがとうございます。帰ります」

 ぺこっと頭を下げ、彼は帰っていく。
 あっさりしてるな、と見送ったのだけど、そのときからずっと彼の背面ショットが頭から消えなくなってしまった。

 週明けの月曜日、給湯室にいたら鷹羽君が現れた。

「おはようございます。この前はありがとうございました」
「おはよ。ビリヤード、ひとりで行くなんてすごいね。好きなの?」

「趣味なんです。カチン、というあの音、病みつきになります」
「わかる」

 あの音、なんだか気持ちいい。その上、狙ったとおりの軌道になったとき、特にポケットにインできたときの達成感は半端ない。

「また行きたいなあ」
 ぼそっとつぶやいたら。
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