ビハインド・ザ・バック ~彼に狙われたら逃げられない~
 今日もまた、彼とビリヤードに行く約束があり、定時になると私と彼は別々に会社を出た。
 ファーストフードのお店で合流する。
 それが暗黙の了解になっていて、秘密の関係っぽさを強調している気がする。

 ごはんを食べ終えて店を出たとき。
「百瀬さん?」
 声をかけられて振り向くと、探るような目つきの門田さんがいた。
 まずい。見つかった。

「どうしたの、ふたりで」
「ビリヤードに行くところ」

 鷹羽くんがさらっと答える。
 そっか。このほうが誤解されずにすむのか。

「私も行きたーい!」
 門田さんの媚びた声に、私はちょっと不愉快になった。彼の背面打ち(ビハインド・ザ・バック)はかっこよすぎて誰にも見られたくない。

「奇数だとやりづらいから。ごめん」
 鷹羽くんの答えに驚いた。奇数人数で遊びに来ている人なんていくらでもいるから。

「じゃあまた今度ね」
 門田さんは残念そうにしながらも素直に退散してくれて、私はほっとした。

「いこっか」
 鷹羽くんがにこやかに手を差し出す。

 あれ? 手をつなぐの?
 私がおどおどとその手を取ると、ぎゅっと握りしめられた。
 急に鼓動を早めた心臓と、彼の手の温かさが気になって仕方がなかった。
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