ビハインド・ザ・バック ~彼に狙われたら逃げられない~
「ブレイクはブレイクショットと呼ばれる最初の一打のことで、ダイヤ型に並んだ九つのボールをばらけさせるの。ブレイクでボールが落ちたら続けてプレイできるんだよ」
「へえ」

「バンキングは、球を打って跳ね返させるの。手前のクッションに近い人がブレイクショットを打つ権利をもらうの」
「試合じゃないんだからじゃんけんでもいいんだけどね」
 言い添える鷹羽くんはそっけない。ふたりでビリヤードしてるときは優しいんだけど。

 四人でやってみた結果、丸野くんがブレイクすることになった。
 彼は先端に滑り止めを塗ってから、意気揚々とキューを構える。打つときの姿はなかなか様になっていて、勢いよく飛び出た手球が九つの球をばーん! と散らばらせた。

「いつもなら一個くらいは入るんだけどな~」
 言いながら、どこか得意げだ。

「百瀬さん、どうぞ」
 鷹羽くんが先に打たせてくれる。

「ありがと」
 私は手球を見据えて体をかがめ、ブリッジとなる左手を台についてキューの先端をはさみ、グリップを右手で握る。

「だめだよそんな構えじゃ」
 丸野くんが口をだしてきて、私は彼を見た。

「足をキューの向きと合わせて、スタンスを安定させて……あ、つい専門用語が出ちゃった。スタンスは足の構え方だよ」

 にやにや笑う丸野くん。どや顔の見本市があれば、真っ先に出品したい。

「打つ人の集中を乱すのはよくないよ」
 鷹羽くんが言うのだが。
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