ビハインド・ザ・バック ~彼に狙われたら逃げられない~
「悪い悪い」
 にやにやしているから、なんか腹が立つ。

 私は再度、白い手球を見つめる。当てることだけに集中し、撞く。無事に一番に当たり、次は門田さんだ。

 彼女は体をくねらせてキューを撞き、手球が弱弱しく一番に当たり、ほかのボールの後ろに入ってしまう。
「やば、ごめん。打ちにくそう」

「ワンクッション当てるといいよ。このあたり」
 丸野くんが枠のふちに指をあてて示す。

「ありがとうございます。でも俺のやり方があるので」
 鷹羽くんはキューを立て気味に構え、真ん中より少しずれた位置を撞く。手球はカーブを描いて一番に当たり、一番がポケットに落ちた。

「マッセじゃないか? 禁止だろ」
 たいていのお店はマッセとジャンプボールを禁止しているし、ここもそうだ。

「ただのカーブショットですよ。マッセはこのくらい立てます」
 鷹羽くんは垂直にキューを立て、ひょうひょうと言い返す。
 丸野くんは面目丸つぶれで悔しそう。

 その後、鷹羽くんは二番に手球を当てた。転がった二番が九番に当たり、九番がポケットに落ちる。つまり鷹羽くんの勝ち。

「ラッキーだったな」
 丸野くんが不満そうに言い、門田さんはつまらなさそうにキューをぶらぶらさせている。

 鷹羽くんを見ると、目だけで笑みを返されてどきっとした。まるで秘密の合図みたい。

 彼はトライアングルラックを使って球を並べ、両手の親指と小指を立ててボールを固定する。このセットする手つきも好きなんだよね。私だとふわふわとボールが動いてしまうのに、彼がやるときゅっとすべてのボールがまとまるの。
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