サヨナラを言う準備は出来ていた。
「ほんとだ……」
「昼に見かけたとき気づいたんだよ。ボーッとし過ぎ。しっかり者の矢部那月はどこ行ったんだ?」
呆れたように見下ろされ、目を逸らす。
「私、しっかりなんてしてないよ。要領悪いし、パッとしない、とか言われてるし」
いつもなら流せる言葉が、今日はなぜか胸を引っ掻くように感じて、つい言い返してしまった。
笹森くんは片眉を上げ、私のクラスに顔を向ける。
「まだ、クラスで上手くいってねぇの?」
「笹森くんには関係ないでしょ」
「関係なくはないだろ。俺ら唯一の同中だし。心配くらいするわ」
怒ったように言われ、そうだよね、と納得する。笹森くんは中学の頃からそうだった。ぶっきらぼうだけど、仲間を大切にする。そういう人。
それを教えてくれたのは、家が隣同士で幼なじみの、内田結星だ。