サヨナラを言う準備は出来ていた。
「……夏祭り」
「同中の奴らで集まって行かないかって。女子は伊藤とかにも声かけるって言ってたし。花火も場所とりしとくって。だから、矢部も……」
「私は——」
立ち止まり、制服の胸元を強く握りしめる。
その時、後ろから「え。やば」と半笑いの声が聞こえてきた。私のクラスの、あの子たちだ。振り返らなくても、声に滲むわずかな悪意からわかる。
彼女たちは足早に横を駆け抜けていく。時々振り返っては「聞いた?」「何で笹森くんが」とひそひそ言い合い、廊下の向こうに去っていった。
笹森くんの舌打ちが聞こえ、私はこっそり笑った。
「私は、行かない」
「矢部」
振り返ると、笹森くんは少し怒ったような顔で私を見ていた。
そんな顔をされても困る。
「ごめん。でも、花火はいつも、結星と一緒に見るって決めてたし」
「結星とって……」