サヨナラを言う準備は出来ていた。
南高は偏差値が高くて、うちの中学から進学できる生徒は毎年ひとりかふたり。
入試に名前を書けば受かると言われている北高とはレベルが違う。
「うちの中学から南高行ったの、私と笹森くんだけなんだよ。彼、サッカー漬けだったのに、さすがだよね。結星とは頭の出来がちがうわ」
進学できるそのひとりかふたりが、俺の幼なじみと親友だった。
涼平は本当に凄い。俺は部活が終わったら帰って飯食って寝るだけだったけど、涼平は帰ったら必ず予習復習をやっていた。成績が下がると、サッカーをやらせてもらえなくなると親に言われていたらしい。
俺も涼平を見習って、部活のあと予習復習をやってみようとしたことがあるけど無理だった。疲れて眠くて、とても机に向かってなんかいられなかった。
それなのに朝練に寝坊で遅刻する俺と、誰より早くグラウンドにいた涼平。
あいつは本当に凄いのだ。
「何どや顔してるの。結星を褒めたわけじゃないんだからね」
那月のあきれ顔が、青に黄色に照らされる。
仕方ないだろう。俺は自分のことが褒められるより、涼平が褒められるほうが何倍も嬉しい。
那月だってそうだ。俺は、お前たちが頑張っているのを誰より知っていたから。