サヨナラを言う準備は出来ていた。
「笹森くん、優しいよね。私が学校に馴染めてないの、気にしてくれるんだよ。でもこの前、矢部は変わったって言われちゃった。暗くなったって。……いや、暗くなった、とは言われなかったかもしれないけど、そんな感じのことをね。優しいけど、厳しいのかもね」
そうか。俺がいなくても、那月と涼平は話せてるのか。まあ、そうだよな。同じ高校だし、同中なのはふたりだけなんだし。
一瞬、いいなあと思ったあと、その“いいなあ”は那月と涼平のどっちに向けたものなのかと、ふと考えてしまった。
「そういえば、前に笹森くんとケンカしたって言ってたよね。あれ、仲直りってしたの?」
覚えてたのか、とギクリとする。前にぽろっと零しただけのはずなのに、よく覚えていたな。
パラパラと火花が落ちるのと一緒に、那月の視線も落ちていく。
「……してないんだ。じゃあ、ケンカしたまま別れちゃったんだね。笹森くん、私には色々言うくせに、自分のことは全然なんだから」
俺がじっと見つめていると、視線に気づいた那月が首を振る。
「心配しないで。笹森くんは元気だよ。多分ね。……でも、中学の頃より笑顔が少なくなったかも。きっと、結星が隣にいないからだね」