サヨナラを言う準備は出来ていた。

「まあ……見るだけなら」

「那月ちゃ~ん!」


愛してる! と叫ばれて苦笑いしながら、岡本さんの動画をチェックした。スタートの姿勢から、中盤の加速、後半どれだけスピードを保てているか。
分析目的で観ているのに、岡本さんの走りが中学の頃よりずっと良くなっていて、何度も見入ってしまいそうになった。


「どう? ピッチとストライド以外でも何かあったら遠慮なく言って!」


三回ほど繰り返し観たあと、岡本さんは期待に満ちた目をして言った。
遠慮をしてほしい人に遠慮なくと言われて、思わず少し笑ってしまう。本当に、なんて飾らない子なんだろう。
前はそういう所に無性にイライラしていたけれど、いまは素直に楽しい子だなと思えるようになった。友だちが多いのも頷ける。


「じゃあ……私ならこうするかなっていうだけの話として聞いてほしいんだけど」

「うんうん、もちろん! やっぱりピッチを上げた方がいい?」


首を横に振ると、意外そうな顔をされた。
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