サヨナラを言う準備は出来ていた。
ピッチを上げるという選択肢が悪いわけじゃないけど、と前置きしてから私は説明する。


「岡本さんは長い手足を活かした、ストライド強化型だよね。でもピッチが極端に低いわけでもない。割と平均的だと思う」

「えっ。ほんと? 監督にはピッチ上げろって言われてるんだけど」

「うーん。私ならいまからピッチ上げるより、ストライドを更に広げる方向でいきたいかな。せっかく恵まれた身長なんだし。あとは同時に接地時間を短くするトレーニングを入れるとか」


意識が無意識になるまで続く、地道できついトレーニングになるだろう。
でも続ければ、きっとタイムは伸びるはずだ。


「ストライドと接地時間か……」

「私が岡本さんならって話だからね? でも私はもう陸上辞めた身だし、監督にはもっと違うものが見えてるのかもしれないから……って、岡本さん聞いてる?」


顎に手を当て、何かぶつぶつ呟く岡本さん。
彼女の顔の前で手を振ると、岡本さんはバッと顔を上げ私の手を取った。

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