サヨナラを言う準備は出来ていた。
事故現場。
その言葉にびくりと肩が跳ねる。
「何を……」
「お前、まだ一度もあそこに行ったことないんだろ」
その通りだった。
結星がいなくなった場所に行こうなんて、考えたこともない。
ずっとずっと避けていた。一生行けない、行きたくないと思っていた。
「やめてよ! 聞きたくない!」
「聞けって!」
勢いよく引っぱられて、気づけば笹森くんの腕の中にいた。
ここ、廊下なのに。ひと気の少ない所まで来ていたけど、言い争う私たちを遠くから見ている生徒がいるのに。
「は、離して」
「……今年も俺は行くつもりだ。矢部も行こう。そうじゃないとお前、いつまでも未来どころか、今さえ見られないままだろ」