サヨナラを言う準備は出来ていた。
どうしてそんなことを言われなくちゃいけないの?
そこに行けば前を向けるとでも?
そんな簡単に過去を、結星を忘れられるとでも言うの?
無理だよ、そんなの。だって結星は……。
「……もう、離し、てっ!」
隔板の向こうから私を見つめる結星の微笑みを思い出して、私は目の前の胸を突き飛ばした。
「私は行かない! 結星と一緒に花火を観るから! そう約束してるんだから!」
「矢部!」
呼び止めてくる声を無視して、私は逃げた。
笹森くんは多分、間違ったことは言ってない。でも、間違っていないことが、正しいこととは限らない。
笹森くんの優しさは、私の心には痛すぎて、受け入れることができなかった。