サヨナラを言う準備は出来ていた。
初めて聞く那月の弱音に、胸が苦しくなる。
俺の知っている那月は、いつだって人に囲まれていた。しっかり者で、明るくて、俺には厳しいけど他の奴らには優しくて。那月のことを嫌う奴なんていないだろうと、本気で思ってた。
だからこんな風に苦しみを吐き出す那月は見たことがない。想像したこともなかった。頭のどこかで、那月は大丈夫だと高をくくっていた。
「でも……誰にも助けてって言えないの」
那月の泣き顔が、青に黄色に照らされる。
子どもの頃に戻ってしまったように泣きじゃくる幼なじみに、俺は言葉ひとつかけてやれない。
そのもどかしさに、気が狂いそうだ。
「結星がいてくれたら、きっと話してた。結星に話して、たくさん泣いたと思う。でも……結星、いなくなっちゃったんだもん」
那月はしっかり者と言われてて、確かにそうなんだけど、でも俺の前では意外とそうじゃない姿を見せていた。
親や友達より、俺には弱い姿を見せてくれていた。親に怒られた愚痴とか、上級生に短距離で負けて悔しいとか、そういうの。
俺はさ、そうやってお前に弱い部分を見せてもらえる自分を、誇らしく思ってたんだぜ。