サヨナラを言う準備は出来ていた。
夜空のキャンバスを埋めつくすほどの、大きな大きな花火が上がる。
締めの花から逃げるように、那月は俺を見て言った。
切実なお願いだった。
「花火が終わってもここにいてよ。明日も、明後日も、来年の今日もずっと」
いいよ、お前がそれを望むなら。
……そう言ってやれなくて、ごめん。
もう既に約束は済んでるから、そのお願いは聞いてやれないんだ。
それは多分、許してもらえない。
もう充分、融通してもらってるから、これ以上の我儘は無理なんだ。
「お願いだから、約束してよ……」
絶え間なく涙をこぼす那月に手を伸ばす。
パラパラと、最後の花火の残り火が散っていく。
「ねぇ、結星……!」
俺の指は、濡れる頬を通り抜ける。
幼馴染の涙ひとつ、拭ってやることもできなかった。
今年も、祭りの夜が終わる。