サヨナラを言う準備は出来ていた。
高校三年・夏


「ねぇ那月~。今度の大会、応援に来てくれる?」


授業が終わると同時に振り返った友人は、私の机にだらりと体を預けながらそう言った。
ショートヘアと日焼けした笑顔がトレードマークの、岡本紗和だ。

三年生になり、同じクラスになった彼女からは、いつの間にか名前で呼ばれるようになっていた。そして最近では、私も彼女を下の名前で呼んでいる。
去年までは考えられない変化だった。


「それって国体の予選? 紗和出るの?」

「うーん。親には受験に集中しろって言われたんだけどねぇ。せっかくここまで頑張ったんだし、最後まで出たくてさ」


南高は市内屈指の進学校。
部活に所属している生徒も、三年生になると部活の中心から身を引き、受験勉強に専念することが多い。


「紗和なら大丈夫だよ。普段から勉強もがんばってるんだしさ」

「ありがと。で? 応援に来てくれる?」


紗和の瞳が期待に満ちてキラキラと輝いている。
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