サヨナラを言う準備は出来ていた。

帰ってくる意味がない。
その通りなのに、私はなぜかひどく傷ついた。
まるで、自分が必要ないと言われたように感じたのだ。彼の気持ちを拒否したくせに、何て自分勝手なんだろう。


「だから……矢部」

「な、何?」

「最後に、一緒にお前と花火が見たい」


それは多分、二度目の告白だった。
でも一度目の時とは少し違う。
笹森くんの顔が、前よりずっと穏やかだったのだ。

穏やか? 本当に?
何だか、全てを受け入れようとしているような、それは全てを諦めようとしているような表情にも見える。
私の中の焦燥感みたいなものが、もっと強くなるのがわかった。


「……これを言いたかったんだ。でも、俺が東京に行くことを先に言ったら、矢部は迷うだろ」

「私が、迷う?」

「俺に同情して、自分の気持ちに噓ついて、OKするんじゃないかと思ってさ。だから、東京行きのことは黙ってたんだ。夏祭りが終わってから話すって決めてた」

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