サヨナラを言う準備は出来ていた。
結星には話したことがないから、知らないかもしれない。
恥ずかしくて言えなかった。
でも、だから、花火は絶対に結星と観るって決めてたんだ。小さな頃から、ずっと。
「断ってくれていいよ」
私の迷いを見透かしたように、笹森くんは不意にそう言った。
誘っておいて、すぐに断っていいだなんて。
笹森くんの考えていることがわからなくて、私は胸元を握りしめながら、立ち尽くすことしかできない。
「俺さ……矢部がずっと、過去で立ち止まってると思ってたんだ。好きだった陸上辞めて、誰も寄せ付けなくなって、ひとりだけ中二の夏で立ち止まって、後ろを向いてるように見えてた」
「……うん」
「それで、もしかしたらこいつ、死ぬんじゃないかって」
「えっ」
驚いた私に、笹森くんは恥ずかしそうに「バカだろ」と笑った。