サヨナラを言う準備は出来ていた。
走りながら、ふと那月が上を向いた。
目が合い、俺は笑った。最期はやっぱ、笑顔でないとな。


『さよなら、那月』


俺の声が届いたのかはわからない。
でもその瞬間、那月の瞳から涙がこぼれるのが見えた。
泣くなよ。もう俺は涙を拭ってやれないんだから。

けど、大丈夫だよな。お前はもう大丈夫だ。
那月の涙と一緒に、パラパラとたくさんの火花が街に落ちていく。
間に合えよ、那月。
花火が終わる前に、つらい時にお前を抱きしめてくれるやつと、涙を拭ってくれるやつと一緒になれ。


意識が遠退いていく。

今年の祭りの夜は、まだ終わらない。


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