自惚れ、アディクト
それからも、他部署の相談を受けたり、後輩が持っている案件の進捗を確認したりと、息つく暇もない。
加えて、社外で打ち合わせが一件。帰社したのは夜の七時前だった。

「ただいま〜」と、人もまばらになったフロアに溢す。デスクに戻ると決裁の山と伝言メモが目につき、眉根を顰めた。頭痛ぇ。爆発するわ。


「お疲れ〜。どうだった?」

斜め前に座る同期が、ひらりと手を挙げる。

「担当者の反応は良かったけど、上からやり直し入るかも」

「あそこ、いっつもそれだよな」
「だな〜」

「でも、愛央ならなんとかするだろ」
「まぁ、なんとかやるわ」

同期がキーボードを打つ音をBGM代わりに、企画書を開く。…が、スマホから鳴り響く通知に気を取られて。

「(さっきからうるせー)」


LINEを開いた。
地元の同級生は結婚報告。後輩は合コンの誘い。先輩は可愛い子紹介してと。セフレは会いたいとか、今日なにしてるの?とか。俺にとっては“どうでもいい”内容ばかり。

つうか、暇じゃねぇって。

流し見していると、花菱の名前で指先が止まる。

今度はなに…。勘弁してくれよ。

「…………」

一応、内容を読む。

《お疲れ様です。修正の件、申し訳ありません。今さっき企画会議で新連載が決まりました。ロゴをお願いしたいんですが大丈夫ですか?》

LINEが来る=急ぎってことか。

《いいよ》

電話でもメールでもないので、砕けた返事を送る。
すぐに既読がついた。

《ありがとうございます。引き受けて下さって助かります!今回、窓口が新入社員の美園(みその)になります。よろしくお願いします。》


「は……」


美園……?


覚えのある苗字に、首を傾げた。


「なあ、美園って知ってる?」
「いや、誰だよ」

同期が肩を竦めて笑う。

「星凪の新卒編集らしい」

「“らしい”って…オレは知らん」

「そ。なんで俺、聞いたことあるんだろ」

カチカチ。と、マウスを動かしながら独り言のように呟いた。

「合コンの子とごっちゃになってんじゃない?」

「なってねぇわ」

「その美園サンがどしたの?」

「ん〜〜。新しい案件の担当になる。花菱さんから連絡来た」

「あのイケメン編集?モテモテだね〜〜。神崎くんは」
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