自惚れ、アディクト
瞼を掠める髪を鬱陶しく思い掻き上げた。
はぁ…っ。と、ふたりの吐息が静寂に包まれた部屋に溶ける。


「愛央くんは、彼女いらないの?」

「なに?急にそんなこと聞いて」

額に張りついた濡れた前髪を掬って、耳にかけてあげた。マットレスに背中を倒し、仰向けになると、視界の端でハートを散りばめた瞳が俺を見つめていて。

「どした?」

なんとなく聞けば、ふふんと得意げに笑って、こちらに身体を寄せる。

「立候補したいなぁ。ずっと一緒にいられる子、欲しくない?」

「え〜〜…」

不満たっぷりな彼女へ顔を向ける。柔らかな耳朶に唇を這わせた。

「ん…っ」

艶めいた声が、胸の奥に残った。

「いらない」
「エ〜〜〜」

くす、と俺は微笑んだ。
頬を膨らませる彼女の頭を「かわいい、かわいい」と撫でて。ゆらりと口を滑らせる。

「彼女作んないって決めてるから。俺、言わなかった?」

「忘れたぁ。誰かと間違えてるんじゃない?愛央くん、最近会ってくれないでしょ」
「そうだっけ」
「そうだよ。先月ぶりだもん」

「(……って、言われてもな)」

「も〜〜っ。相変わらずチャラいなぁ。でも、そういうところが好き♡」

「ハンナちゃん、変わってんね」

胸元に抱きつかれた。首の後ろに腕が回る。

「ねぇ、もういっかいする?」

「やめとく」
「…ケチ」


と、彼女は唇を尖らせる。

あーあ。また、機嫌悪くしたわ。
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