自惚れ、アディクト
*結莉side

「(やっぱり…このひとが神崎さん…)」

仕事相手の男性(ひと)の前に立ったとき私は瞳を瞬かせた。ぱち、ぱち。炭酸が、弾けるような刺激のある音がした。

私はこの男性を“よく”知っている。
一方的にだけど。

———結莉ちゃん。おやすみ

いとちゃんに似て、はっきりとした美麗な顔立ちをしていたので、ちゃんと覚えているのだ。

「(髪、長いんだなぁ)」

なんて、仕事に関係ない感想を思ったりもしたの。


「!!(いけない…!見すぎちゃった…しゅうちゅう、集中)」


挙動不審な私に対して、神崎さんが不思議そうに首をゆらりと傾げる。
私の頬が熱を集めていく。俯き加減に視線を下げた。

神崎さんはきっと私のコト、覚えてないんだろうな。「なんだコイツ」って顔、してるんだもん。

速攻で仕事モードに切り替え、改めてお辞儀した。


「いつもお世話になります。よろしくお願いします」

「お世話になります。神崎です、よろしくお願いします」

𓈒 𓏸𓈒𓂂𓂃♡

「美園」と、花菱先輩に言われた。
神崎さんたちが帰った後、会議室の片付けをしている最中だった。


「お疲れ。今日はありがとな」

よく出来てた。そう、花菱先輩は優しい言葉を添えてくれる。ポ…と、ほっぺがチークの上から更に色づく。

「は、ハイ…ありがとうございます」

資料作りも進行も不安だらけだったけど、花菱先輩に褒められ、さっきまで張り詰めていた緊張が解けた。ふわふわ舞い上がって、気持ちが浮かれてしまって。すぐ、気を引き締めなきゃと切り替えて。

「(もっと頑張ろ…っ)」


両手に抱えた資料の束を、ぎゅっと抱きしめた。
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