自惚れ、アディクト
「(……やば)」
「神崎さん?」

「あ゛〜…ごめんね?なんでもない」
「(ぎもんけい?)」

心に引っかかる違和感は腹の底に溜まる。それを抱えて星凪出版を後にした。別件で近くの企業に寄ってから、仕事が休みの永遠と食事をすることになった。

暑いし、ラーメンは食えんと駄弁りながら歩き、永遠が勧めたイタリアンへ。店内中央のテーブル席に案内された。


「何時までに戻ったらええん?」
「二時」
「おっけー。ほな、ゆっくりできるなぁ。愛央ちんなに食べる?」

「ん」

ランチメニューをさっと眺める。
上段のものを指差した。

「パスタ」
「めっちゃ美味しそうやん。オレも一緒のにしよ〜」

「すみません、注文お願いします」と、永遠が軽く手を挙げて、店員を呼び止める。

ふたりして仲良く同じメニューだが、永遠は四百円で追加できるドルチェも注文する。
パンナコッタ、バニラアイス、バスクチーズケーキと甘い物尽くしで、聞くだけでも胸焼けしそうだ。

「デザートは別腹やん」


平然と言う永遠に「オマエの胃袋どうなってんだよ」と、半ば呆れながら呟いた。レモン水を飲む永遠が「せや」と、話を折って。俺に前のめりする。


「青砥(あおと)くん結婚するらしいで」

あおと…?

聞き覚えあるのは懐かしいサッカー部員の名前。
ぼやけていた記憶が、ぴくりと刺激されて、青砥の顔が浮かぶ。

「インスタに上がってたやつだろ?」

「なぁ。びっくりしたわぁ。この間、彼女できた言うてたばっかだったやん。結婚式するんやろか」

「見て、やばない?オレのシフト」と、スケジュールがびっしり埋まったスマホのカレンダーを差し出す永遠は、都内の有名サロンで働く美容師だ。
中でも永遠は指名客が多く、ここ一年ほど、休みの調整が難しかったらしい。

「二十代後半って、怖いよな。みんなの結婚ラッシュに、ついていかれへんわ〜〜」

「ソダネ〜〜」

「愛央ちんは思ってへんやろ」
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