自惚れ、アディクト
「さっきは、ありがとうございました」
「いーえ」
「メール楽しみに待ってます。私、先生にも電話で伝えてて」

美園さんは、大人びた表情にあどけなさを残して、ふにゃと笑う。どうしてか、今の俺は、彼女のこういうところにめっぽう弱い。

胸の奥が可笑しな音を立てた。
ゆっくり、早鐘になっていく。

なんでこんなにドキッとしてんだろ。


「じゃあ、失礼します」
「…おう」

そんで、なんで俺は偉そうなんだよ。

「(クソ。調子狂うな)」


あのとき、美園さんの髪に触れようと伸ばしかけた掌を、膝の上で握った。


「可愛い子やん」

永遠が俺を見るなり、愉しげにダークブラウンの瞳を細める。

こっちはそれどころじゃねぇっての。

「てか、めっちゃ良い子やん」

「…………」

「仕事で関わってるん?」

「ん、今受けてる案件で…。つうか、いとの友達」

「ほな、新卒か。通りで、めっちゃキラキラしてたわけやわ。……って、こんなこと言うとかオレも歳取ったわ…。あ〜……ヘコむ」

「俺らまだ二十七じゃん」

「はは…」

永遠の浮ついた話を聞くはずが、美園さんの登場により、機会を逃してしまった。前菜がテーブルに運ばれて、永遠がサラダを食べ始める。「コーンスープも美味いよ」と、俺の好みっぽいことも教えてくれる永遠を他所に、セフレから届いたLINEの続きに目をやる。

絵文字ひとつで終わらせたと思っていたのは、俺だけだった。

《あおくんのお家行っていい?》

ほんの一瞬、躊躇ってしまった。家に上がらせない言い訳を巡らせようとしていた。
……可笑しい。いつもなら深く考えず、返信するはずなのに。

「…………」

《いいよ》

ほんと、どうかしてんな。
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