自惚れ、アディクト
一階の受付まで美園さんを見送る。
華奢な身体に、大きめのホワイトのトートバッグを提げる姿が目に焼きついた。背中が小さい。
「今日はありがとうございました」
「こっちこそ、わざわざ来てくれて助かったわ」
「…では、引き続き……よろしくお願いします」
丸い頭が、低く下がりかけるのを止めた。
「ちょっと」
「??」
彼女の前髪に指先を伸ばす。
シャボンの甘ったるい香りが鼻先を掠めた。
「ん。ついてた」
銀色に煌めく糸屑を取る。美園さんが、ぱちと瞳をはためかせた。純粋無垢な眼差しに、どうしてかこっちが悪いコトをした気分になる。
「いとちゃんから、私のこと聞きましたか?」
「なにも」
半分は嘘が含まれている。
いとに「手を出すな」と、耳にタコができるほど忠告されているが、そんなの言えねぇしな。
「…………」
「そうですか」
じゃあ、今度はこっちが質問をする番だ。
「いとから、俺のこと聞いた?」
首を縦に振る。内側に巻いた明るいブラウンの毛先が、滑らかに揺れて。触れたいと思った。
「どんな男だって?」
「…ヒミツです」
美園さんが、俺に視線を合わせる。
「なぁ」と「あの」が被さり、俺は「どうぞ」と、先に譲った。彼女のきつく結んだ唇の端が解ける。
「……私、彼氏いません」
美園さんは踵を返した。
言い逃げだろ。俺だけがぽつんと取り残される。
——……わたし、かれしいません
ぐるぐると、言葉が頭上を駆け回る。
「なんだそれ」
あ゛〜〜…かわいいポイントそのニが加算されてしまった。
華奢な身体に、大きめのホワイトのトートバッグを提げる姿が目に焼きついた。背中が小さい。
「今日はありがとうございました」
「こっちこそ、わざわざ来てくれて助かったわ」
「…では、引き続き……よろしくお願いします」
丸い頭が、低く下がりかけるのを止めた。
「ちょっと」
「??」
彼女の前髪に指先を伸ばす。
シャボンの甘ったるい香りが鼻先を掠めた。
「ん。ついてた」
銀色に煌めく糸屑を取る。美園さんが、ぱちと瞳をはためかせた。純粋無垢な眼差しに、どうしてかこっちが悪いコトをした気分になる。
「いとちゃんから、私のこと聞きましたか?」
「なにも」
半分は嘘が含まれている。
いとに「手を出すな」と、耳にタコができるほど忠告されているが、そんなの言えねぇしな。
「…………」
「そうですか」
じゃあ、今度はこっちが質問をする番だ。
「いとから、俺のこと聞いた?」
首を縦に振る。内側に巻いた明るいブラウンの毛先が、滑らかに揺れて。触れたいと思った。
「どんな男だって?」
「…ヒミツです」
美園さんが、俺に視線を合わせる。
「なぁ」と「あの」が被さり、俺は「どうぞ」と、先に譲った。彼女のきつく結んだ唇の端が解ける。
「……私、彼氏いません」
美園さんは踵を返した。
言い逃げだろ。俺だけがぽつんと取り残される。
——……わたし、かれしいません
ぐるぐると、言葉が頭上を駆け回る。
「なんだそれ」
あ゛〜〜…かわいいポイントそのニが加算されてしまった。