自惚れ、アディクト
⸝⸝꙳

「…………(先輩のキーボード音、こわすぎ)」

隣のデスクから、後輩の冷ややかな視線を感じた。

連日続きの残業は、華金にも支障をきたしている。
定時に帰ろうとしていたのに、他部署の相談を請け負い、委託先からは急なデータ変更が入ったりと、抱えている仕事が両手から溢れている気がして仕方ない。今だって、十九時を過ぎているのに、先方へメールを送ったところだ。

机上に置いたスマホの通知音が、煩いったらしゃーない。ピロン、と何度目かの通知が鳴った。
「先輩、ずっと鳴ってますよ…」と、後輩が恐る恐る尋ねる。溜め息を我慢した。眉を顰めてLINEを指先ひとつでタップする。

《まだ〜🥺?》

相手は、十九時に会う約束をしてるセフレ。
メッセージの前には、ワザと出なかった着信が二件。《着いたよ♡♡》も、あるわ。

《ごめん まだ、時間かかる》

とりあえず、これだけ返す。

《はーい🙋‍♀️スタバで待ってまーす》


「先輩、先に失礼します」
「おー、お疲れ」
「お疲れ様でした」


後輩も仕事を終えて帰宅した。
だだっ広いオフィスには、俺以外にも数人が残っている。

今日中に処理すべき業務が終わったのは、二十時を回った頃。セフレも流石に帰っただろうと思いLINEを開けば、スタバで座っている膝下と、フラペチーノの写真が送られていた。しかも十分前。

「(そういう気分じゃなくなったんだよな)」

《今、終わったんだけど》と、途中まで打ったところでパソコンに新着メールが届いた。


「マジか」

今度は盛大な溜め息が落ちた。
頬杖ついて「…ったく、誰だよ」そう、愚痴った差出人は——

「美園…さん?」


こんな時間まで残ってんの?
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