自惚れ、アディクト
明日に返せばいいものを、迷うことなく中身を開いて、文面を読み進める。
要約すると『三校で納品だと思っていたデザインに大幅な修正が入りました。本当に申し訳ありません。』である。

彼女を責めるつもりはない。
きっと、上長に提出した後で修正するように言われたのだろう。急な変更など、この業界ではあることだ。別に俺は驚きはしない。

「…………」

午前中、嬉しそうに笑みを零していた彼女が脳裏に浮かぶ。貰った名刺を引っ張り出す。記載されていた番号に電話をかけた。


「星凪出版、編集部の美園です」

ワンコールで出た。こっちも名乗り「お疲れ」と、一言声をかける。周りに誰もいないのを良いことに、タメ口だ。

「修正の件だけど」

俺から切り出すと、鼻を啜る音が微かに鼓膜へ滑り込む。

「気にすんな。こっちでなんとかする」

「でも……」

「デザイナーには、俺からよく言っておくから。納期まで、時間あるだろ?」

「……はい」

「誰も美園さんを責めねぇよ」

「ありがとうございます」

涙声が震えている。

「じゃあ、修正内容だけ確認して、明日の朝イチにメール送るわ」

「…………よろしくお願いします」と、消えそうな声音。しゅんとしているのが、向こう側で窺えた。花菱は側にいないのだろうかと、ふと考えて。

「……つうか、飯食った?」

「エッ…?」

美園さんが素っ頓狂に言葉を転がす。
俺は息を吐くように続けた。

「今から、行かない?」


う〜わ、誘うの下手すぎんだろ。
もっと上手くできんのにな。

か細い声で「ハイ…」と、返ってきた。胸の奥が、じわりと熱くなる。

《今日、無理になった》

セフレにそれだけ送った。
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