自惚れ、アディクト
「電話、だいじょうぶですか?」

スマホを手に収めて、着信履歴を見る。

本来、会うはずだったセフレからの鬼電と、吹き出しのメッセージがいくつも重なっている。

《どういうこと!?》《意味わかんないんだけど》《ずっと、待ってたんだよ!?今どこ!?》

《だから、ごめんて》と、短い謝罪を送る。
既読がついた。向こうの連絡がくる前に、指先ひとつでブロックをして、スマホを伏せた。


「だいじょーぶ」

「…………(ほんとうに?)」


白グラスが届き、少し口に含む。
アルコールを前に美園さんは涼しげな顔色を見せていたが、一口飲んだ瞬間、ぎゅっと目を瞑り苦そうにしてみせる。かわいい。

料理も次々と運ばれる。食事をしながら、仕事以外…例えばプライベートの話をしてみる。休みの日はなにしてるとか、他愛もないことを。

ワイン三杯で美園さんは耳の先まで朱色に染め上げていた。少し饒舌になっている彼女に対し、頬杖をつきながら、俺は耳を傾ける。

瞳を潤ませて言う。


「ありがとうございます。ご飯、誘ってくれて。……気遣ってもらってばかりで、申し訳ないです」

「いーよ、そう言う堅苦しいのは」

「…………」

「気分転換なった?」


ゆっくり頷いて。「ハイ。とっても」と、ふにゃりと微笑む。涙袋の下がほんのり赤い。親指が、涙跡に触れた。今度は躊躇わずに、肌の上を撫でる。

「…………」
「…………」

職場の内情なんて話せるわけないから、それでいいと思った。
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