自惚れ、アディクト
「他の子と仲良くしないで。……話さないで…っ。私だけ見てよ…!」

右手で顔を覆う茉莉花が大粒の涙を溢れさせて、目を擦りながら訴える。
騒がしい店内で、茉莉花の鼻を啜る音がやけに近く聞こえた。


「そうじゃないと、わたしがわたしじゃいられなくなる。も……苦しい」


カリンのときと同じ。
俺の中で、す…っと熱が引いていく。

昨日まで可愛いと思っていた我儘も、少し気が強いところも、今はただ重たい。

つうか、なんでこうなった。


「…………」

「なんで…っ。否定しないの!?愛央も、まだ柚乃ちゃんが好きなんだ!?今まで付き合ってきた子で、一番かわいいもんね」

元カノの作り話、信じんのかよ。

「どうせ、わたしなんか愛央にとって“遊び”の中の一人なんでしょ」


嗚咽混じりに泣き続ける。こうなった茉莉花を止められないことは、よく知っているので、とりあえず流れに任せることにした。


「愛央のバカぁ」
「…………」

「さいってー。…っ、ぐす。黙ってないで、なにか言ってよ……」


隣の席でパソコンと向かい合ってるサラリーマンが、やけに此方を気にしていて。視線が交差したと思えば「やば…」と、言いたげな勢いで顔を背けられた。

てか、泣き声でけぇな。


「わかった」

「……っ!」

くっきりした濃い線の二重を、ぱちぱち…と瞬きさせながら、泣き腫らした瞳で茉莉花が俺を見つめる。

俺は気怠げに頬杖をついた。

「んじゃ、別れよ」


どうやら、俺といるとおかしくなるらしい。
茉莉花と別れた後も、告白されれば付き合って。重たくなれば別れて。部活に打ち込んで。

そんな交際を繰り返した高三の夏だった。

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