思ってたのと違う! 女王は最愛の騎士ではなく、狂犬と結婚を強要される
 そう思ってしまったら、駄目だった。
 夫のことが、愛おしくて堪らない。

「すぐに他者へ嫉妬する。狂犬を手懐けるには、まだまだ時間がかかりそうね……」

 リベルラは自らの意思で、初めて夫の唇を奪った。
 ガルドラは触れるだけの口づけを受け、銀色の瞳を驚きで見開いている。
 どうやら、信じられない気持ちで、いっぱいのようだ。

(そういうところが、好きよ)

 これは、はっきりと声に出して言えない気持ちを代弁するための行為だ。
 それ以上でもそれ以下でもない。

(いつか言葉にして、伝えられますように……)

 不敵な笑みを浮かべた女王は彼の腕の中に抱かれ、幸せな気持ちでいっぱいになりながら目を閉じる。

「おい、起きろ。リベルラ」

 ガクガクと両肩を揺すられても狸寝入りを続けたのは、彼の本心が知りたかったからだ。

(彼は今の行為を、どう思っているのかしら……?)

 長い沈黙が続く中、こっそりと薄目を開く。
 口元を抑えて天を仰ぐ夫の耳は、真っ赤に染まっていた。

「あー、もう……。あんなことされたら、期待しちまうじゃねぇか……」

 リベルラはまるでいたずらが成功した子どものように満足そうな笑みを浮かべると、再び目を閉じ――今度こそ、意識を失った。
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