思ってたのと違う! 女王は最愛の騎士ではなく、狂犬と結婚を強要される
(私に危害を加える気がないと言うのは、どうやら本当みたいね……)

 リベルラは王族として生まれ、なんの苦労もなく蝶よ花よと育てられてきた。
 だから、スラム街で幼い頃から暮らしてきた彼の生活を想像して同情することはできるが、彼の痛みに寄り添って理解をするのは難しいという自覚がある。

 こちらが想像を絶するほどの劣悪な環境で、過ごしてきたのだ。
 普通なら、「そこから早く抜け出したい」と考えていてもおかしくはない。

 しかし――。
 彼は己の立場が、スラム街の狂犬と呼ばれる存在のままでも、構わないと言う。

(こいつの目的は、一体なんなのかしら……)

 リベルラは納得がいかない様子で、ガルドラに訝しげな視線を向ける。
 だが――。
 穴が開くほどに見つめたところで、憎たらしい笑みを浮かべた男の姿が視界いっぱいに広がるだけだ。

 劣悪な環境で暮らしてきたとは思えぬほどに、よく手入れが施された藍色の髪。
 気難しい狼のように鋭く尖る、銀色の瞳--。

(貴族なら、ご令嬢たちが放っておかなかったでしょうね……)

 彼が平民であることを残念に思いながら、リベルラは狂犬に問いかけた。
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